
歯周病は日本人の成人の多くがかかっている病気で、初期段階では自覚症状がほとんどありません。
しかし放っておくと歯を支える骨が溶けて歯がぐらつき、最終的には歯が抜けてしまうこともある怖い病気です。
そんな歯周病について「完治するのか?」と疑問に思う人は多いでしょう。
実は歯周病は慢性的な病気で、一度発症すると完全に治すことは非常に難しいのが現状です。
今回は、歯周病がなぜ完治しにくいのか、治療の目的や方法、治療後の管理について詳しく解説します。
なぜ歯周病は完治しない?
歯周病は、歯周組織に細菌が感染し、炎症を引き起こすことで進行する慢性の感染症です。口の中の細菌は完全に取り除くことはできず、また免疫力や生活習慣、遺伝的な体質も影響するため、完治は難しいとされています。
さらに、歯周病は進行すると骨や歯肉の組織が破壊されるため、一度失われた骨を完全に元に戻すことは現代の歯科医療でも難しいのが実情です。
だからこそ、治療の目的は「病気の進行を食い止めて現状維持を図ること」にあります。完治ではなく「管理し続ける」ことが歯周病治療の現実なのです。
歯周病のリスク
歯周病菌は歯の表面や歯周ポケット内に複雑に付着し、バイオフィルムと呼ばれる強固な細菌の膜を作り出します。このバイオフィルムは歯磨きだけでは除去しきれず、細菌は繰り返し歯周組織に炎症を引き起こします。
また、免疫力の低下や喫煙、ストレス、糖尿病などの全身疾患も歯周病の進行に影響します。これらの要因が重なることで、完治が難しくなっています。
歯周病治療の目的とは?
歯周病治療の主な目的は、炎症を抑え、歯を支える骨の破壊を遅らせることです。痛みや腫れ、出血などの症状を軽減し、日常生活で不快を感じないようにすることも重要です。完治が難しいため、歯周病は「コントロール可能な病気」として扱われます。
つまり、症状を安定させて健康な状態を維持し、悪化を防ぐことが治療のゴールです。
具体的な治療目標
治療では、まず歯周ポケット内に溜まったプラークや歯石を除去し、細菌の量を減らします。これにより歯肉の炎症が収まり、歯周ポケットが浅くなることを目指します。
また、患者様自身のブラッシング指導や生活習慣の改善も治療の一部です。最終的に、歯を長く健康に保てる状態にすることが治療の最大の目標となります
歯周病の治療でできること
歯周病の治療は、歯科医院での専門的なケアと患者自身のセルフケアの2つが柱です。治療を始める前にこれらのポイントを理解し、積極的に取り組むことが重要です。
専門的な歯科治療
歯科医院ではまず、スケーリングという歯石除去から始めます。スケーラーと呼ばれる器具で歯の表面や歯周ポケット内の歯石を徹底的に取り除きます。
次に、ルートプレーニングという処置で歯根の表面を滑らかにし、細菌の付着を防ぎます。これらは歯周病菌の温床を減らすために欠かせない処置です。炎症が強い場合は、抗菌薬の投与やレーザー治療が追加されることもあります。
さらに重度の歯周病では、外科手術で感染した組織を切除したり、骨の再生治療を行うなど、進行度合いによって治療の負担は大きく異なるでしょう。
患者様自身のセルフケア
治療効果を維持するには、毎日のセルフケアが不可欠です。正しい歯磨きはもちろん、歯間ブラシやデンタルフロスで歯と歯の間の汚れを取り除くことも欠かせません。また、口呼吸の癖がある方はその改善や規則正しい生活、禁煙も歯周病の進行を抑制します。
セルフケアは治療の効果を左右するため、歯科医師や歯科衛生士の指導を受けながら継続していくことが大切です。
治療後のメンテナンスと再発予防
歯周病は治療後も再発しやすいため、定期的なメンテナンスが欠かせません。メンテナンスを怠ると、せっかく抑えた炎症が再び悪化し、歯を失うリスクが高まります。
定期検診の重要性
治療が一段落しても、3~6ヶ月ごとに歯科医院で検診を受けるようにしましょう。歯周ポケットの深さや歯ぐきの状態をチェックし、問題があれば早期に対処します。また、専門的なクリーニングを行うことで、セルフケアでは落としきれない汚れを除去できます。こうした定期的なケアが、歯周病の再発防止につながります。
生活習慣の見直しと継続的なケア
喫煙は歯周病の最大のリスクファクターの一つです。禁煙は歯周病治療の効果を高め、再発を防ぐために非常に効果的です。また、食生活の改善やストレス管理、十分な睡眠など健康的な生活習慣を心がけることで、免疫力が向上し歯周病の進行を抑えやすくなります。
完治は難しくても、抑えることは可能

歯周病は完全に治すことが難しい慢性的な疾患ですが、専門的な治療とセルフケア、そして定期的なメンテナンスを継続することで、進行を抑え健康な歯を長く保つことが可能です。早期に発見し治療を始めることが最も重要で、症状が出てからでは手遅れになることもあります。気になる症状があれば、早めに歯科医院で相談するようにしましょう。